野生動物

令和5(2023)年度の堅果類等の豊凶調査 全国まとめ|ヒグマ・ツキノワグマ

 秋期の堅果類(ドングリ類)などはツキノワグマの重要な餌資源となっており、実なりの状況(豊凶状況)に大きな影響を受けます。特に、実なりの悪い年(凶作年)には人里付近へ出没する可能性が高まると考えられています。そのため、各地域では堅果類等の豊凶調査が実施され、秋期の人里への出没が予測されています。本ページでは全国で実施されている堅果類等の豊凶調査についてまとめました。

堅果類等の豊凶調査とは

 秋期の堅果類(ドングリ類)などはツキノワグマの重要な餌資源となっており、実なりの状況(豊凶状況)に大きな影響を受けます。特に、実なりの悪い年(凶作年)には人里付近へ出没する可能性が高まると考えられています。そのため、各地域では堅果類等の豊凶調査が実施され、秋期の人里への出没が予測されています。

主要な堅果類

コナラ

 コナラはブナ目ブナ科コナラ属に分類される落葉広葉樹であり、北海道・本州・四国・九州に分布しています。

クリ

 クリはブナ目ブナ科クリ属に分類される落葉紅葉樹であり、北海道・本州・四国・九州に分布しています。

ミズナラ

 ミズナラはブナ目ブナ科コナラ属に分類される落葉紅葉樹であり、北海道・本州・四国・九州に分布しています。

北海道

北海道

北海道

 北海道では、秋のヒグマの主要食物のミズナラ(299地点)・ブナ(24地点)・ヤマブドウ・サルナシ(226地点)の実なり状況について、関係機関等とともに平成17年度から実施されています。

 

 令和5年度は広範囲でミズナラ・ブナ・ヤマブドウ不作で実なりの悪い傾向がみられ、サルナシは半数の地点で不作あるいは凶作で残りは豊作~並作であると報告されています。

豊凶区分

  • 凶作
  • 不作
  • 並作
  • 豊作

 

ミズナラブナヤマブドウサルナシ
不作不作不作凶作(半数)
豊作~並作

東北

青森県

東北森林管理局

 東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶調査が実施されています。

 

 令和5年度はブナの開花状況・結実状況ともに大凶作であると予測されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

ブナ(開花状況)ブナ(結実状況)
大凶作大凶作

岩手県

東北森林管理局

 東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶状況調査を実施しています。

 

 令和5年度はブナの開花状況・結実状況ともに大凶作であると予測されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

ブナ(開花状況)ブナ(結実状況)
大凶作大凶作

宮城県

東北森林管理局

 東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶状況調査を実施しています。

 

 令和5年度はブナの開花状況・結実状況ともに大凶作であると予測されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

ブナ(開花状況)ブナ(結実状況)
大凶作大凶作

秋田県

秋田県

 令和5年度のブナは森吉山(並作)を除いた地域で凶作、ミズナラはすべての地域で凶作と予測されています。 

豊凶区分

  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

調査地点ブナミズナラ
八森凶作凶作
森吉山並作凶作
田沢湖凶作凶作
東成瀬凶作凶作
鳥海凶作

東北森林管理局

  東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶調査が実施されています。

 令和5年度はブナの開花状況・結実状況ともに大凶作であると予測されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

ブナ(開花状況)ブナ(結実状況)
大凶作大凶作

山形県

山形県

 山形県の森林面積(約15万ha)の約22%を占める天然のブナ林は、秋期の野生動物の食料として大きな役割を果たしています。山形県では、森林の生態系の変化や野生動物の生息の影響を把握するためにブナの豊凶調査が実施されています。

 令和5年度はすべての地域で凶作と予測されています。

豊凶区分

  • 凶作
  • 並作
  • 豊作


調査地点ブナ
湯の台凶作
羽黒山凶作
関川凶作
沼の台凶作
西小俣凶作
与蔵峠凶作
鍋越峠凶作
弓張平凶作
入田沢凶作
月山自然植物園凶作
花立峠凶作
黒伏凶作
蔵王(鳥兜)凶作
駒立
徳網凶作

東北森林管理局

 東北森林管理局では、管内(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)の145箇所の調査地点において、ブナの開花及び種子の豊凶調査が実施されています。

 令和5年度はブナの開花状況・結実状況ともに大凶作であると予測されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

ブナ(開花状況)ブナ(結実状況)
大凶作大凶作

福島県

福島県

 福島県では、会津地方・中通り地方でブナ・ミズナラ・コナラの調査が実施されています。

 令和5年度は、ブナについては実りが悪く凶作、ミズナラ・コナラについては並作であると予測されています。冬眠する時期(12月ごろ)までクマがエサを求めて徘徊することが予想されます(福島県HP)。

豊凶区分

  • 凶作
  • 不作
  • 並作
  • 豊作

開花予想

ブナミズナラコナラ
大凶作並作並作

結実予測

ブナミズナラコナラ
凶作並作並作

関東

栃木県

栃木県

 栃木県では、林業技術センターにより8月〜9月に高原・県北・県南・奥日光地域でミズナラ・コナラの豊凶調査が実施されています。

 県北地域のミズナラの結実が悪化したものの、高原地域のミズナラ、コナラ及び県南地域のコナラの結実が改善し、全体としては概ね良好な結実が予測されています(栃木県HP)。

高原地域
ミズナラコナラクリブナイヌブナ
並作不作不作並作~凶作豊作~凶作

県北地域
ミズナラコナラクリ
不作不作並作

県南地域
ミズナラコナラクリ
凶作並作並作

奥日光地域
ミズナラ
凶作

群馬県

群馬県

 群馬県では、9月上旬から中旬に利根沼田地域でブナ・ミズナラ・コナラ・クリ・ミズキの調査が実施されています。

 令和5年度の堅果類豊凶調査の結果は、ブナが大凶作、ミズナラ、コナラ、クリが不作、ミズキが並作と予測されています。

 

ブナミズナラコナラクリミズキ
大凶作不作不作不作並作

中部

新潟県

新潟県

 新潟県では、7月1日〜8月31日に、全県356地点(佐渡市・栗島浦村を除く)でブナ・ミズナラ・コナラ・クリ・オニグルミの調査が実施されています。

 令和5年度はブナが凶作、ミズナラ・コナラが不作、クリ・オニグルミが並作であると推測されています。

豊凶区分

  • 凶作
  • 不作
  • 並作
  • 豊作

ブナミズナラコナラクリオニグルミ
凶作不作不作並作並作

富山県

富山県

 富山県では、全県でブナ(15地点)・ミズナラ(16地点)・コナラ(10地点)の豊凶調査が実施されています。

 令和5年度はブナ・ミズナラ・コナラともにが不作であると推測されています。そのため、ブナが凶作である県東部を中心に低標高域で活動するクマが増加すると予想され、平野部への出没も懸念されています。このため、山裾の集落周辺のほか平野部においてもクマ出没に十分警戒する必要があります(富山県HP)。

ブナミズナラコナラ
不作不作不作

中部森林管理局

 中部森林管理局では、長野県内の国有林52箇所において、堅果類(ブナ・ミズナラ)の豊凶調査が実施されています(調査時期:7月末~8月)。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作下
  • 並作
  • 並作上
  • 豊作
  • 大豊作

砺波・小矢部地域

ブナミズナラコナラ
凶作不作

富山地域

ブナミズナラコナラ
凶作並作下並作下

新川地域

ブナミズナラコナラ
凶作凶作

石川県

石川県

 石川県では8月中旬から9月上旬に、「着果状況調査」から推定した堅果類(ブナ:20地点・ミズナラ22地点・コナラ30地点)の豊凶調査が実施されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作
  • 大豊作

ブナミズナラコナラ
並作並作並作

福井県

福井県

 福井県ではツキノワグマの大量出没を予測するために、平成17年度より秋期の主要作物である堅果類の豊凶調査が実施されています。

 令和5年度はブナが凶作、ミズナラ・コナラが不作であると予測されています。そのため、全域でクマが里へ大量出没する可能性が高いと判断されています。クマの活動が活発になる9~12月上旬にかけて、集落周辺の里山に恒常的に生息しているクマに加え奥山に生息する個体が、食物を求めて集落に大量に出没する恐れがあり、警戒が必要です(福井県HP)。

豊凶区分

  • 凶作
  • 不作
  • 並作
  • 豊作

ブナミズナラコナラ
凶作不作不作

長野県

長野県

 長野県では、秋の餌の状況により人里周辺への出没が増加する場合があることから、主な餌となるブナ、ミズナラ、コナラ等の堅果類の豊凶調査が実施されています。

 令和5年度はブナが凶作、ミズナラ・コナラは並作下、クリ・クヌギは並作と推測されています。長野県内で一定の結実が見込まれているため、秋冬にかけての全県的なクマの大量出没の可能性は低いと考えられています(長野県HP)。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作下
  • 並作
  • 並作上
  • 豊作
  • 大豊作

ブナミズナラコナラクリ
クヌギ
凶作並作下並作下並作

中部森林管理局

 中部森林管理局では、長野県内の国有林233箇所において、堅果類(ブナ・ミズナラ・コナラ)の豊凶調査が実施されています(調査時期:8月中旬~9月上旬)。

 令和5年度はブナは凶作~並作、ミズナラは不作~並作下、コナラは凶作~並作下と予測されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作下
  • 並作
  • 並作上
  • 豊作
  • 大豊作

ブナミズナラコナラ
凶作~不作不作~並作下凶作~並作下

岐阜県

岐阜県

 岐阜県では、秋季のクマの主な餌であるブナ・ミズナラ・コナラの堅果類の豊凶がクマの出没に影響を与えることから、県内5圏域、25地点の指標木(1地点あたり10本)の調査が実施されています。

 

 令和5年度はブナ・ミズナラは凶作、コナラは並作と予測されています。全体的に凶作の傾向が見られるため、クマの生活圏に近い里山近辺では、クマの出没に注意が必要と報告されています(岐阜県HP)。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作
  • 大豊作

ブナミズナラコナラ
凶作
(大凶作~凶作)
凶作
(凶作~並作)
並作
(並作~豊作)

愛知県

愛知県

 愛知県ではミズナラ・コナラの豊凶調査(10地点)が行われ、専門家の助言を受けツキノワグマの出没予測が行われています。

 令和5年度はミズナラが凶作、コナラが並作と予測されています。地域によってはエサを求めてツキノワグマが人間の生活圏に出没する頻度が高まる可能性があると考えられています(愛知県HP)。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作
  • 大豊作

ミズナラコナラ
凶作並作

中部森林管理署

 中部森林管理局では、愛知県内の国有林17箇所において、堅果類(ミズナラ・コナラ)の豊凶調査が実施されています(調査時期:8月末から9月上旬)。

 令和5年度はミズナラが凶作、コナラが並作下であると予測されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作
  • 豊作
  • 大豊作

ミズナラコナラ
凶作並作下

関西

滋賀県

滋賀県

 滋賀県では秋期のツキノワグマの出没の可能性の予測を行うため、ツキノワグマが恒常的に生息している湖北地域および湖西地域の山地において堅果類の結実調査が行われています。

 令和5年度はブナが凶作、ミズナラ・コナラが不作と予測されています。令和5年度の堅果類の実なりはいずれも昨年度並みとなっており、資源量は例年並みであると考えられています。

豊凶区分

  • 凶作
  • 不作
  • 並作
  • 豊作

ブナミズナラコナラ
凶作不作 不作

京都府

京都府

 京都府ではコナラ・ミズナラ・ブナ・イヌブナの調査が実施されています。

 令和5年度はコナラ・ミズナラが並作、ブナ・イヌブナが凶作と報告されています。

豊凶区分

  • 凶作
  • 並作
  • 豊作

コナラミズナラブナイヌブナ
並作並作 凶作凶作

中国

鳥取県

鳥取県(鳥取大学へ委託)

 鳥取県では、秋期のツキノワグマの出没の参考とするため、平成23年度からブナ・ミズナラ・コナラ・クリの豊凶調査が実施されています。

 令和5年度はブナが凶作、ミズナラ・コナラ・クリが並作下と予測されています。

豊凶区分

  • 大凶作
  • 凶作
  • 並作下
  • 並作上
  • 豊作
  • 大豊作

ブナミズナラコナラクリ
凶作並作下 並作下並作下

島根県

中山間地域研究センター

 島根県では、秋期のツキノワグマの出没予測の参考にするため、平成26年度から堅果類等の豊凶調査が実施されています。

ブナミズナラコナラシバグリ
凶作 凶作並作豊作
アラカシスダジイシラカシクマノミズキ
豊作 豊作豊作並作
ウワミズザクラ
凶作